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ガス器機の基本ルール

ガス衣類乾燥機の話を長々と書いて気づいたのですが、

ガス器機を分類分けすれば良いのではと思いあたりました。

 

室内のガス器機には、給排気に関して3種類あります。

① 開放式       屋内の空気を燃焼させ、屋内に排気する。

② 半密閉式 (FE式)  屋内の空気を燃焼させ、屋外に排気する。

③ 密閉式  (FF式)  屋外の空気を燃焼させ、屋外に排気する。

現状の戸建てで、ガス給湯器をワザワザ室内に付ける事は、ほぼ無いでしょうが、

昭和の時代は、そうではありませんでした。

①の代表例は、瞬間湯沸かし器と呼ばれるもの。

今でも現役で販売されており、写真の機種は右側面から給気して、上部に排気します。

 

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②と③は、写真的にはあまり変わりませんが、まず②の半密閉式から。

前面に室内空気の取り入れ口が付いていて、排気は上部のダクトから屋外に出します。

 

RUX-V1015SWFA

 

最後が③の密閉式です。

写真の通り、上部にダクトが2本有りますので、給気も排気も屋外です。

 

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①の開放式は、瞬間湯沸かし器以外でも、暖房器具として活躍していました。

灯油やガスのファンヒーターを実家で使ってた! という人も多いのでは?

1時間に1~2回は換気するよう注意書きシールが貼ってましたね。

賃貸マンションは、火災対策として灯油やガスを嫌う傾向にありますから、最近は少なくなっています。

室内に排気するのですから、空気は確実に汚れますが、開放型のガスファンヒーターは健在です。

ですが、新築で最も多い開放式のガス器機は、キッチンのガスコンロです。

これ、単体だけなら開放式なんです。

そのままでは良くない、と言うことで、レンジフードをセットにしています。

組み合わせ① 排気のみのレンジフード  → 半密閉式

組み合わせ② 同時給排式レンジフード  → 密閉式

 

②の半密閉式、ここにガス衣類乾燥機が該当します。

屋内の空気を燃焼させて、屋外に排気を排出する器機ですからね。

リンナイのHPを探しましたが、家庭用の半密閉式給湯器はありませんでした。

業務用と風呂釜用が残っているだけです。(写真は業務用です)

暖房器具も、開放式と密閉式のみで、半密閉式はありません。

なのでガス衣類乾燥機は、非常に珍しい半密閉式ガス器具でもあります。

 

③の密閉式は、FF式と言った方が通りが良いかもしれません。

屋外の空気を燃焼させて、屋外に排気します。

だったら器機本体も屋外に取り付けたら良いのでは、と考えるのが普通。

なので、給湯器は屋外タイプが主流となっていますが、

暖房器具は熱源が室内に有った方が有利なので、密閉式は残っていますし、

条件次第では、選択肢に入ると思います。(寒い地域ならですが)

 

さてまとめです。

ガスを室内で燃焼させる器機は、

開放式 → 半密閉式 → 密閉式 

の順で、室内環境に優しいと覚えて下さい。

自分が導入しようとするガス器機が、どの方式なのか? を考えて、

それを導入した時に、密閉式的扱いに出来るかどうかを検討しましょう。

例1

ガスコンロを導入したい。  (IHコンロは、CO2は出ませんが排気は必要なので同様)

 → (排気のみの)レンジフードを選ぶ → 半密閉式  → 使用時に窓を開ける必要あり

 → 同時給排式レンジフードを選ぶ    → 密閉式   → 普通に使える 

または

 → (排気のみの)レンジフードと電動給気シャッターを付ける → 密閉式  → 普通に使える

例2

ガス衣類乾燥機を導入したい

 →排湿筒を付ける           → 半密閉式 → 使用時に窓を開ける必要あり

 →排湿筒と電動給気シャッターを付ける → 密閉式 → 普通に使える。

結論

ガス器機は、密閉式(同時給排)にして使う。

同時給排に出来ない、開放式の器機は極力避ける。

 注) 半密閉式は、必ず同時給排に出来ます。

室内の空気環境を守る鉄則だと考えます。

ガス衣類乾燥機には専用の給気が必要 その4(最後)

前回のまとめから。

ガス衣類乾燥機は、レンジフードの弱運転と、同等の排気を行う機械です。

1時間に174㎥もの排気を行っているのですから、

30坪の家(240㎥)であれば、90分もあれば家の中の空気がなくなる量です。

ではどのような現象が起きるでしょうか。

ファンの能力が高い場合

 → 室内が負圧になって、気密欠損部から漏気が始まる。

  玄関扉等、外部に面した扉が開けづらくなる。

ファンの能力が低い場合

 → ファンは回るだけで、負圧になるほど排気できない。

どちらにしても、メーカーが想定している量の排気が行われないことは確実。

結果、排ガスが室内に逆流したり、条件が悪ければ不完全燃焼を起こすのでしょうね。

 

住宅に義務づけられている24時間換気は、

30坪の家(240㎥)の空気を2時間毎に取り替えています。

つまり㎥/hに換算すると、120㎥/hの能力。

ですが、給気・排気ともに5~6箇所に分岐していますから、
 
一箇所の能力は、20㎥/h程度。
 
家の中をゆっくりと空気が動いているイメージですね。
 
そんな空間でガス衣類乾燥機を稼働させると、
 
突然174㎥/hの排気が発生する。
 
そよ風が吹いているところに、台風が襲来したイメージです。
 
室内環境、ガス衣類乾燥機のどちらにとっても、悪影響しか及ぼしません。
 
大切な事なので、繰り返します。
 
ガス衣類乾燥機は、専用の給気と組み合わせて使いましょう。
 
室内で衣類乾燥機の排ガスを吸わされるのは、割に合いませんからね。

ガス衣類乾燥機には専用の給気が必要 その3

前回は、ガス衣類乾燥機とガスレンジの類似点をまとめてみました。

① ガス衣類乾燥はの熱量は、ガスコンロ2つ分程度。

② ガスコンロ2台を稼働した場合の必要換気量は、レンジフードであれば、178㎥/h。

 

さて件のガス衣類乾燥機はこんな姿ですね。(再掲)

2980000043390M

これにダクトを取り付けて、外部に排気をするのですが、形状はこんな感じ。

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DF-100という名称で、口径100の専用排気フードです。

リンナイでは乾太くんの排気を、排気と言わず排湿と呼んでいます。

なので、オプションを見ても、排湿ホースとか排湿管セット等という名称。

たかが名称ですが、何故「排気」としなかったのかは疑問です。

排湿では、何か空気ではなく、湿気だけ逃がしてくれそうな気がしませんか?

ですが、現実は水蒸気を含んだ空気を排気します。

もう少し正確に言えば、

酸素燃焼後の二酸化炭素と水蒸気と熱を含んだガスを排気するのです。

その為に、「乾太くん」の内部には、1分間に2.9㎥の排気が出来るファンが搭載されています。

(リンナイの方に教えてもらいました)

これは時間換算だと、174㎥/hの能力。

つまりガス衣類乾燥機は、レンジフードの弱運転同等の排気を行う必要がある機械なのです。

次回でまとめます。

ガス衣類乾燥機には専用の給気が必要 その2

前回の続きです。

衣類ガス乾燥機を最大パワーで稼働する場合

1時間につき、755㎥の新鮮空気が必要な数値。

30坪の住宅の気積が240㎥なので、その3倍もの空気が必要・・・

ホントに? って思いますよね。

 

この数値の是非の前に、同じガス器具であるガスコンロを考えてみます。

リンナイのデリシアというシリーズを例にとると、

2つあるメインバーナーは、各3.610kcal/h。 全部点火すると9.630kcal/hだそうです。

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ガスコンロの排気はレンジフードで行います。

弊宅設置レンジフードの取説によると風量は、弱 230 中 300 強 420 (㎥/h)。

衣類ガス乾燥機の4.470kcalは、コンロ2つ分ぐらいの熱量ですから、

先程の755㎥/hと比較すると、強運転でも全く足りません。

 

ガスコンロに必要な換気量を探してみると、建築基準法にありました。

1口コンロ 81㎥/h  2口コンロ 178㎥/h 3口コンロ 259㎥/h

とされています。

やはり755㎥/hとは大分違う数値ですよね。

ですがこの2つは条件が違うだけなのです。

建築基準法の言う風量は

レンジフードという専用換気装置と組み合わせた場合の風量だからです。

レンジフードには条件があります。

① 高さ(レンジからフード下端まで)は1m以下

② フードの大きさは、レンジを覆う

この条件、つまり排出ガスが拡散しないうちに処理できる形状と取付位置なんですね。

一方、755㎥/hは、

30坪(240㎥)の空間内で、器機独自による外部排気を考えない場合とでも考えたら良いのだと思います。

(想像です)

とても分かりづらい話になってしまいました。ごめんなさい。

今回の結論は、

ガス衣類乾燥機の熱量は、ガスコンロ2つ分程度。

ガスコンロ2台を稼働した場合の必要換気量は、レンジフードであれば、178㎥/h。

という事でした。

・・・全体の半分ぐらい進みました。後2回お付き合い下さい。

ガス衣類乾燥機には専用の給気が必要 その1

まず、結論から。

キッチンに同時給排式レンジフードが必要な住宅において

(いわゆる高気密住宅ですね)

ガス衣類乾燥機を導入するなら、専用給気が必須です。

何故ならば

ガス衣類乾燥機とガスコンロに必要な排気性能は、ほぼ同等だから。

 

湿度をコントロールする事が出来ない。つまりデシカを使わない場合、

「室内干し」に大きな期待をする事は危険です。

そこで出てくるのが、ガス衣類乾燥機。

電気式に比べて、早いと言うのが圧倒的な利点ですが、良い事ばかりではありません。

室内でガスを燃焼させるのですから、給排気の設備が必要です。

 

東京ガスのHPには、ガス種13A(大部分の都市ガスはこれ)の発熱量として

45MJ/m3(10,750kcal/m3)

という表記がありました。

一方、代表的なガス乾燥機・リンナイの乾太くん(RDT-52S)のカタログには、

2980000043390M

ガス消費量として(13Aの場合)、最大で5.20kW(4,470kcal/h)という表記があります。

1時間で4.470kcalの熱量を発生するガスの体積を計算すると

4,470÷10,750=0.41  1時間で0.41㎥のガスを消費します。

0.41㎥とは、1辺が約74㎝のサイコロサイズ。(0.74×0.74×0.74=0.4)

一方、そのガスを完全燃焼させるためには、どれだけの空気が要るでしょう。

これも東京ガスのHPから。

都市ガスが完全に燃焼するためには、都市ガス1に対しておよそ14倍の空気が必要です。

都市ガスを使う時には充分換気をお願いいたします。

つまり、ガス衣類乾燥機を1時間稼働させるためには、

0.41㎥×14=5.74㎥の空気が必要。

5.74㎥と言ってもピンときませんよね。

この5.74㎥が、多いか少ないか?

建築基準法で考えてみましょう。

24時間換気の基準として、換気回数0.5回/時をご存じの方は多いと思います。

これは、2時間に1回、家の中の空気を取り替える必要がある。

と言う事で、この数値は、

一人当りの必要新鮮空気量を30㎥/時と仮定して、4人家族が30坪(240㎥)の住宅に住んでいる。

と言う標準家庭を元に算定されています。

人間一人で30㎥ならば、5.74㎥は誤差の範囲のように見えますね。

ですが人間の必要新鮮空気と、都市ガスの必要空気は意味が違います。

人間の必要新鮮空気は、

室内の二酸化炭素濃度を、ある一定以下に抑える。

という縛りがあるのです。

一方、ガスの燃焼における空気が14倍必要というのは、

あくまで、ガスが完全燃焼するのに必要な。という意味。

住宅内部においてガスを燃焼しているわけですから、

健康を考えれば、室内の二酸化炭素濃度を保つための必要換気量として捉える必要があります。

空気調和・衛生工学会規格という小難しい名称の部会であるのですが、

その数値を見ると、都市ガス1.000kcal当り、169㎥/hと決められています。

先程、ガス衣類乾燥機は、1時間で最大4.470kcal発生するとの事なので、

1時間につき、755㎥の新鮮空気が必要となります。

続きます。

景色にご注目

名古屋では、昨日(8/3)の14時に40.1℃を記録したみたいです。

さて、住宅の断熱に興味がある方は、日射遮蔽に理解がある方が多いです。

ですが、意外な盲点が、窓からの景色に隠れています。

窓から外を眺めると、いろんな物が見えます。

その中で多くを占めるのは、地面。

その地面からの熱放射、つまり照り返しが、結構なくせ者。

日中の道路を出すまでもなく、日が当たる地面は、外気温より大分高温になります。

アスファルトは犬の天敵

上記LINKはペット向けのページですが、人間より犬の方が、地面の熱さに敏感という話。

何故ならば、地面に近いから。

同じ理屈を住宅に当てはめると、夏場の熱の侵入は、掃き出し窓の足元が大きいのだと思います。

個人的な意見として、住宅に掃き出し窓は不要だと思っているのですが、その考えが補強された気がします。

外断熱と火災の関係

前回は高層ビルの話でした。

なので今回は身近な話をしてみます。

木造住宅も外断熱があります。(正式には外張り断熱)

CACICOも断熱外壁ですから、人ごとではありません。

外張り断熱で火災対策を考えた場合、最も有利なのは不燃の断熱材を使う事。

不燃断熱材と言えば、グラスウールとかロックウールぐらいしかありませんけどね。

で、その2つは基本柔らかいので、充填断熱がメイン。

知っている範囲だと、ドイツのアルセコが、ロックウールをブロック状にして外断熱外壁を作っています。

日本でも発売されていますし、低燃費住宅さんは基本仕様として導入してます。

さて、そうでなければ、ロンドンの火災のようになるのか?

まずは結論から。

少なくともCACICOの外断熱システムでは、そのような事態にはなりません。

火災は、大きく分けて2種類あります。

① 室内からの出火

② 外部からのもらい火(類焼)

ロンドンのビル火災は①ですね。

BBCのイラストが大変分かりやすいです。

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このような火災を表層火災と呼びます。

なかなか恐いですよね。

でもまぁ木造住宅の場合は、一階室内の火災が、表層を走って二階に行く・・・

のではなく、素直に室内側で二階に行くと思います。

なので表層火災が危険なのは、中層や高層の建物です。

もちろん木造の表層火災に問題が無いわけでは有りません。

火が外を走る為、隣家への類焼リスクが上がると思われます。

で、構造の話に戻ります。

木造住宅で、BBCの断面構造に類似しているのは、乾式施工の外張り断熱です。

構造用合板の外側に断熱材を貼って、その上に通気層、で最後は外壁。

因みにCACICOの場合は、

s-IMG_7653_DxO

構造用合板の外側に断熱材までは同じですが、そこに直接モルタル被覆。

なので、BBCのイラストにあるCavity(空間)がありません。

またSWP火災のような、小口(断面)からの延焼にも対応しています。

s-IMG_7654_DxO

サッシとぶつかっている所や水切りの上など、

火と接触する可能性の有る小口は、全てモルタルで被覆します。

(写真はサンプルなので着色していますが、現場では未着色)

 

続いて②の類焼の話を。

これ、原則的には防火認定があれば問題ない。と思っていたのですが、

仕上げが金属サイディングである場合は、不安が残ります。

それは、火に炙られて金属表面が高温になり、断熱材が着火する可能性が有るからです。

詳しくは日経アーキテクチュアの、戸建てでも表層火災の延焼は起こるを読んで欲しいです。

取り上げているのは典型的なサンドイッチパネルですが、

外張り断熱+ガルバ仕上げも似たような状態に陥る危険性がありますね。

 

最後に、戸建て住宅における火災への対応、

特に類焼を防ぐ、最も効果的な手法をご紹介します。

それは、電動防火シャッターの設置です。

外壁の防火性能が高いに越した事はありませんが、火は一番弱い所から侵入します。

(この辺り、断熱も同じですね)

なので、類焼対策としては、

① 電動防火シャッターに煙・熱感知器を取り付けて連動させる。

(外出中・就寝中の火災がありますからね)

② 外壁の防火性能を上げる。

の順番で導入して欲しいです。

蛇足

CACICOは、延焼(えんしょう)と類焼(るいしょう)を分けて使っています。

延焼 同一の建物で、火事が広がる事

類焼 別の建物に、火事が広がる事(もらい火)

ロンドン高層住宅火災を類推する

6月14日、なのでホンの数日前ですが、ロンドンで高層住宅の火災事故がありました。

ネット情報だけでまとめると

外断熱改修した事が、火災の大規模化に繋がったようです。

外断熱建築物の火災ですが、乾式の場合、大きく2つに分類できます。

①サンドイッチパネル(SWP)火災

②外張り+通気工法による火災

まずは①ですが、SWPとは、金属板で断熱材をサンドイッチ加工した部材です。

写真を掲載すると、いろいろ問題がありそうなので、ご興味のある方は、検索してください。

中国や韓国には、この手の外断熱建築物が多いらしいです。

SWPは、表面が金属、つまり不燃なのですが、

小口(断面)側から火が入ったり、鉄板が高温度で熱せられる事で、内部の断熱材が着火してしまう。

でもって、一度着火すると、鉄板が邪魔をして、消火が出来ずに延焼が拡大するそうです。

このタイプ、実は外断熱だけではなく、色んな用途で使われています。

例えば、こんな感じ。

66p_03

SWPを釣り天井に使った例です。

外壁だけではなく、天井、間仕切り壁等、いろんな所で使われているため、

外断熱専用品と言う訳ではありません。

で、この手の構造は、中に火が回ると、とてもやっかい。

 

もう一つの②ですが、こちらは断熱材と空気層がセットされている場合なので、

より一層危険だと思います。

中国の有名な外断熱火災であるTVCCビル火災が、この該当例。

金属の波板に断熱材が貼り付けられていて、かつ内側が中空だったそうです。

zu2-1

日経アーキテクチュアから転載

図面は断面の構造です。軽量化しながら剛性を高めるため、スペースフレームで中空にしています。

75mm RIGID THERMAL INSULATION と書かれているのが断熱材ですね。

日本語に訳すと、7.5㎝厚の硬質断熱材かな?

春節を祝う花火が引火して火災になったそうなのですが、この図を見て分かるとおり、

「ZINIC CLADDING SYSTEM」 ・・・中も外も亜鉛合金の鉄板に覆われていて、

壁内部の火災を消火する事は不可能です。

ロンドン高層住宅火災はどうかと言えば、下記の写真をネットで見つけました。

 

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この図面が「正」だとすれば、

既存の躯体+断熱材+通気(排水)層+金属パネル

という構造になっています。

金属パネルと躯体の間に、断熱材(可燃物)と空気(酸素)が挟み込まれている

火災に弱い構造に思えますね。

基礎を長持ちさせるには

前2回に渡って、鉄筋コンクリートと言う構造物の、性質の話をしました。

実例を追加します

「荒廃するアメリカ」と言う言葉を知っているでしょうか?

犯罪多発が・・・ではなく、1980年代、アメリカのインフラが老朽化し、

実生活に多大な影響を与えた。という話です。

荒廃するアメリカ」と、その後の取り組み」 (国土交通省)  に詳しく書かれています。

(同タイトルの翻訳書籍もあるのですが、現在廃版)

ざっくり要約

アメリカは世界恐慌に対処するため、大規模なインフラ投資、つまり道路・橋梁などを一気に整備した。それが1930年代で、ニューディール政策と呼ばれている。

インフラの構造は、言わずと知れた「鉄筋コンクリート」。

投資が一巡した後は、お決まりの公共投資の圧縮が始まり、維持管理予算が大きく削減される事となった。

その見返りが、穴ぼこだらけの高速道路と、渡ることが出来ない橋の大量出現で、「荒廃するアメリカ」と呼ばれた。

メンテナンスを怠ると、たかが5、60年で使い物にならなくなる(可能性がある)

それが鉄筋コンクリートなんですね。

で、日本のインフラ整備はアメリカの30年遅れなので、現在の日本は、「荒廃する日本」に面している。

と言う話。

もちろん、その理屈が住宅の基礎にそのまま適応される・・・かどうかは知りません。

ですが、条件によっては「木材より鉄筋コンクリートが長持ち」

ではない事すらあるのですね。

なので、鉄筋コンクリートを長持ちさせる努力は必要です。

話が少し脱線しますが、

鉄筋の構造って、なぜか人間の【歯】に似ていると思うのです。

375px-Tooth_section_internationalWikipediaから拝借してきました。

1 エナメル質 

  → 歯の一番強固な部分。  C0 C1

2 象牙質 

  → 歯の主体です。ここまで虫歯が進むと、冷たいものがしみる。 C2

3 歯髄  

  → 一般的に言う歯の神経。ここに達すると、何もしなくても痛い。 C3以降

 

で、ここからはCACICOの(かってな)理論を展開します。

鉄筋コンクリートと歯の関係は、

1 エナメル質 → 仕上げ材

2 象牙質   → コンクリート

3 歯髄    → 鉄筋

と思えるのですね。

で、現在の鉄筋コンクリート造の建物は、

エナメル質(仕上げ材)にほとんどコストをかけません。

・・・言葉が正確じゃないですね。

「鉄筋コンクリート自体に耐久性がある」という思い込みで、

エナメル質を、装飾としか捉えていない。

なので20年に一度、虫歯の治療、つまり大規模修繕をするハメに陥っているのです。

CACICOとしてはもっと良い方法があると考えます。

考え方は、歯の対処と同じ。

虫歯に罹ってから治療するのではなく、虫歯に罹らないよう予防するのです。

またまた脱線しますが、

医療の世界において、歯科だけに「予防」目的の治療が保険適用できます。

(紆余曲折があったようですが)

歯科以外では、保険治療を受ける時は「病名」が必要。

例) 風邪に罹りそうだから栄養剤を投与する。と言う事は保険診療では出来ません。

「病名」つまり、病気に罹っていないと保険治療は受けられないのが原則。

ですが歯科においては、歯の病気に罹りづらくする予防治療というジャンルがあります。

歯の疾患は一般の病気と違って、元に戻る(完全治癒)事がありません。

例)虫歯の治療は、患部を削って詰めるだけ。健全な歯には戻りません。

なので、治療ではなく、予防が大切なんですね。

鉄筋コンクリートも同様。

コンクリートを自然環境に曝すのではなく、エナメル質で守ってあげる。

それが基礎の外断熱化なんですね。

前回、鉄筋コンクリートに大切なのは「かぶり厚」と説明しました。

かぶり厚は、厚ければ厚いほど良いのですが、

コンクリートを厚くするより、コンクリートを保護する層をプラスする方が効果的。

と考えるのです。

(鉄筋)コンクリートの寿命とは

鉄筋コンクリートのおさらい。

構造としては、

圧縮に強く、引張に弱いコンクリートと、

引張に強く、圧縮に弱い鉄筋を

掛け合わせたものです。

つまり

圧縮に強いが、引張に弱いコンクリートを、引張に強い鉄筋で補強して、

構造体としての自由度を大きくした。

といった所でしょうか。

確かに自重を軽量化し、複雑な形状を可能にしたのは、鉄筋のお陰ですが、

その見返りとして、

鉄筋の寿命=鉄筋コンクリートの寿命

という十字架を背負うことになった。と言うのが今回の骨子。

 

鉄筋コンクリートの世界でコンクリートは鉄筋を保護するものです。

なので専門用語で「かぶり厚」と言うのですが、

鉄筋を覆っているコンクリートの厚さが、建築基準法で規定されています。

因みに、「鉄の寿命」と言うのも解りづらいですよね。

簡単に言うと、鉄は錆びると終わりです。

錆びた鉄は、鉄本来の性能、つまり引張力が担保されなくなりますが、

もう一つ恐いのは、鉄は錆びることにより、その体積が2倍以上に膨れ上がる事です。

コンクリートの内部で、鉄筋の体積が2倍になる。

と言う事は、コンクリートが内側から強い圧力を受ける。

外部からの力は圧縮方向ですが、内部からの力は引張方向となります。

つまり、錆びた鉄筋は、コンクリートの苦手な引張の原因となるのです。

結果、鉄筋表面のコンクリートが圧力に耐えきれなくなって破壊されます。

これを、業界用語で「爆裂」と言います。

爆裂って単語、普通は爆裂弾(爆薬の古い言い方)のような戦争や武器で使う言い回しですが、

それが該当してしまうほど、酷い外見になってしまうのですね。

鉄筋が錆びる原因は、大きく2つ。

①塩害

②中性化

です。知識がないため詳しい説明は出来ませんが、

①塩害

塩は金属にとって大敵です。海に近いと金属は錆びやすいですよね。

②中性化

はもう少し理系的な説明に挑戦。

コンクリートの初期は強アルカリ状態で、この中にいると金属は保護されていて錆びません。

(理由は聞かないでください)

ですが、時間と共に空気中の二酸化炭素等の影響で、コンクリートはアルカリから酸性に変化していきます。

これをコンクリートの中性化と言い、

酸性化したコンクリートは、鉄を保護しなくなり、結果錆が発生するのです。

面白いのは、塩害にしろ、中性化にしろ、

コンクリート自体の性能には何の影響も及ぼさない事。

ローマン・コンクリートで作られたパンテオンの長寿命が、これで分かります。

構造体に金属を使っていないからなんです。

さて、鉄筋コンクリートはそういう訳にはいきませんから、

塩害や中性化と対峙するしかありません。

コンクリート自体は長寿命だけど、鉄筋コンクリートはその限りではないのです。

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